安芸は土居廓中と呼ばれる武家屋敷の町並みが残っています。瓦屋根や土佐漆喰壁、東部特有の水切り瓦など、そんな家並みが今も残る景観の中に、どんな佇まいの「土佐派の家」を建てるか、地域の素材を使用し、周囲の家並みに溶け込みながら、いかに「現代性」と「美しさ」をもった家をつくるかがテーマでした。
外壁は土佐漆喰と杉板張り目板押え、屋根は切妻状のいぶし瓦、そして水平のラインをリードする軽快な金属屋根。可能な限り構成要素を単純にしてシンプルに仕上げました。内部壁は土佐漆喰、杉板、床は桧、天井は構造材を見せ力強い内部空間になっています。
この家の特徴は、回遊できる中庭です。元々、前に建っていた家には、中庭にツバキ、梅ハナミズキ、ツゲなどたくさんの立木や植物が植えられていました。敷地が南北に長いこともあり、極力既存の中庭を残しながら、建物の配置を考えました。北棟に母屋、南棟は離れになりました。
回遊できる中庭が南北に分かれた棟を繋ぎ、一定のプライバシーを守りながら家族の風景に彩りを与えてくれることでしょう。
屋根 / 日本瓦葺き
外壁 / 土佐漆喰ヨロイ仕上
天井 / 杉板張り
壁 / 土佐漆喰仕上
床 / 桧縁甲板張り
西森啓史(西森啓史建築研究所)
(有)勇工務店