造成後、一世代以上過ぎ、高度成長期に建設された住宅群がこの団地を支配する景観となっています。そんな団地の中にどんな佇まいの「土佐派の家」を建てるか、地域の素材を使用し、いかに「現代性」と「美しさ」をもった家をつくることがテーマでした。
この家の特徴は、空へと登っていく屋根です。空の青さと瓦が光り輝いて美しい調和を奏でます。ケラバ瓦は「中付袖瓦」軒先瓦は「地瓦」を使用しました。屋根は片流れ状のいぶし瓦、そして水平のラインをリードする軽快な金属屋根。可能な限り構成要素を単純にしてシンプルに仕上げました。
建物は30坪程度の小さな家ですが、光や風をいっぱいに受け、気持ちよく過ごすことのできる居間空間を出来るだけ広くとりました。それに和室が付属し、水廻りや収納、生活に必要なものは殆ど1階に揃っています。2階は寝室と予備スペースと趣味の部屋、色々な使い方に対応可能です。
内も外も全て地場産材を活かした職人の手技でつくられており、部分的に空間に緊張感や生き生きした感覚を与えるためにステンレスやアルミが使用されています。壁は土佐漆喰、杉板、床は桧、天井は構造材を見せ力強い内部空間になっています。
簡潔で美しい佇まいとなるよう、職人さんとも相談し合いながらつくりました。高知の風土に抗うことなく現代の感性に合った上品な家です。
屋根 / 日本瓦葺き
外壁 / 土佐漆喰仕上
天井 / 杉板張り
壁 / 土佐漆喰仕上
床 / 桧縁甲板張り
西森啓史(西森啓史建築研究所)
(有)勇工務店