設計・松澤 敏明
(徳弘・松澤建築事務所)


時代をつなぐ 町屋再生
 この建築は、昭和7年に回船問屋として建てられ、信用金庫、店舗併用住宅と時代の変遷により用途は変わっても久礼の街で親しまれてきました。今回改修と増築をして専用住宅に再生しました。昔の仕事に今の仕事を重ねていくこと、時間を生きた価値あるものを受け継ぎ、単なる保存ではなく、今できる手当てをして 生活の器として活かして使うことは当たり前のことです。そのことは、空間を活かすのみならず時間をも重ねることのできる 建築を楽しむ「ゆとり」であり、地域固有の文化、風景を育む「ゆとり」 ともいえるのではないでしょうか。近所の老人が「子供のころ手間をかけ立派につくられたのをみている、工事がはじまり心配したが残って本当によかった」 とわざわざ話しに来たそうです。

 地域の素材を使い、伝統的な技術を活かす家づくりは、このような仕事で「100年の家」も確実なものとして、イメージできます。木造の伝統工法で建てられた家を再生し現代の生活に活かして使う事は、循環型社会を構築しなければ地球が持たないという環境問題を抱えている 現代の、時代的要請です。しかし経済合理性に偏重した建築生産システム、ローコストを是とする家づくりは、プレカット、乾式工法に進み大工左官の仕事を、技術のいらないものとし、仕事自体をもなくしています。この改修前に、構造調査で小屋裏にあがると、施主、大工、左官の名前が書かれた昭和8年の棟札がありました。そこに時間を超えて仕事をのこす職人のほこりを感じました。

 今、少数派であっても、技術の伝承のできる仕事をつくり、職人の仕事を評価し、職人を育てなければ、木が活き活きと使われる木造建築の文化や技術の継承は、手遅れになるのではないかと危惧しています。(松澤敏明)
土佐派ネットワークス
ギャラリー一覧へ
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸
佐竹邸